2026年8月、診断士ドットコムでは、中小企業診断士を対象とした実務従事プログラムを実施しました。
今回の事例企業は、富山県で「もつ」を中心とした飲食店を2店舗展開するとともに、ホルモンの処理・加工を自社で手掛ける企業です。
「モツで笑おう」を掲げ、食を通じてお客様に活力を届けることを大切にしながら、店舗運営だけでなく、食品加工やイベント出店などにも取り組んでいます。
今回の実務従事では、こうした企業の強みをどのように今後の成長につなげていくのかをテーマに、参加した中小企業診断士が複数のチームに分かれて分析・提案を行いました。
事前分析からスタート
実務従事では、まず事例企業から提供された企業情報や財務情報などをもとに、参加者それぞれが事前分析を行います。
今回の企業は「飲食店」という側面だけでなく、ホルモンの処理・加工機能を自社で有していることが大きな特徴です。
そのため、店舗の売上や集客だけを見るのではなく、
- 店舗の客層や利用状況
- 観光客・インバウンド需要
- 商品・サービスの特徴
- 工場の生産体制
- 人員配置や採用
- イベント出店
- 情報発信・SNS
- 人材育成や組織づくり
など、企業全体を俯瞰しながら仮説を立てていきました。
「売上を伸ばすにはどうすればよいか」という一つの問いであっても、マーケティング、人材、生産、財務など、さまざまな角度から考えられることが中小企業診断士の企業支援の特徴です。
経営者へのヒアリングで「数字の背景」を探る
事前分析の後は、経営者へのヒアリングを行いました。
資料や財務データだけでは分からない情報を確認し、自分たちが立てた仮説が正しいのかを検証していきます。
今回も、店舗ごとの客層や利用人数、繁忙時間帯、観光客の動向、工場のオペレーション、人材採用、今後予定している取り組みなどについて、各チームからさまざまな質問が挙がりました。
特に印象的だったのが、近年の観光需要です。
海外からのお客様も増えており、特にアジア圏からの来店が多いとのことでした。
また、今後は観光客をターゲットとしたランチ営業も計画されています。
こうしたヒアリングを重ねることで、
「現在のお客様は誰なのか」
「これから狙うべきお客様は誰なのか」
「そのためには何を変える必要があるのか」
といった議論が、より具体的になっていきました。
「良い商品」をどうやって届けるか
今回の企業の強みの一つが、商品へのこだわりです。
仕入れたホルモンの加工では、特に「洗浄」に時間と手間をかけています。
店舗で料理を提供するだけではなく、その前段階となる加工工程にも自社で深く関わっている点は、他社との差別化を考えるうえでも重要なポイントとなりました。
一方で、良い商品を持っているだけで、必ずしもその価値がお客様に伝わるとは限りません。
ヒアリングでは、SNS等による情報発信について、運用する人材が不足していることも課題として挙げられました。
商品そのものの強みと、
「その強みを誰に、どのように伝えるのか」
というマーケティングの視点を組み合わせて考えることも、今回の重要なテーマの一つとなりました。
成長するためには「人」の視点も欠かせない
事業を成長させるうえで、もう一つ重要なテーマとなったのが人材です。
例えば、店舗の営業日数や営業時間を増やしたり、新たにランチ営業を始めたりする場合には、それを支える社員やパート・アルバイトの存在が欠かせません。
工場についても同様です。
設備上は生産量を増やせたとしても、実際にそこで働く人材を確保できなければ、事業を拡大することはできません。
つまり、
「売上を増やせるか」だけではなく、「その売上を実現できる組織をつくれるか」まで考える必要があります。
今回の実務従事でも、店舗・工場それぞれの人員体制や採用、人材育成などについて議論が行われました。
企業が大切にしている価値観も経営資源
今回の企業では、「モツで笑おう」という言葉とともに、日々の仕事で大切にする考え方として「6つの約束」を掲げています。
その中には、
「本物にこだわる」
「目の前の人を喜ばせる」
「富山にありがとう」
「みんなで明るい未来を目指す」
「自分の仕事に誇りを持つ」
「笑いながら前進する」
といった考え方があります。
また、現在は社内で理念委員会を立ち上げ、社員同士で「どのような会社にしていきたいのか」を話し合いながら、経営理念の策定にも取り組んでいます。
企業分析というと、売上や利益、市場規模などの数字に目が向きがちです。
しかし、その会社が「何を大切にしているのか」「どのような会社になりたいのか」も、今後の戦略を考えるうえでは重要な要素です。
企業らしさを残しながら成長するためにはどうすればよいのか。
そうした視点も含めて、各チームが提案を検討していきました。
「何をやるか」だけでなく「何を優先するか」
今回の企業には、さまざまな成長の可能性があります。
既存店舗の集客力を高めること。
観光客・インバウンド需要を取り込むこと。
ランチ営業などによって新たな需要を開拓すること。
情報発信を強化すること。
加工機能を活用して新たな販路を検討すること。
組織や人材育成の仕組みを整えること。
しかし、中小企業には使える人材・資金・時間に限りがあります。
すべての施策を同時に実行することが、必ずしも正解とは限りません。
だからこそ今回の実務従事では、
「この企業が今、最も優先して取り組むべきことは何か」
という視点を大切にしながら、チーム内で議論を重ねました。
中小企業診断士だからこそ、企業全体を見る
中小企業の経営課題は、一つの分野だけで完結することはほとんどありません。
例えば、「もっと売上を伸ばしたい」という課題一つをとっても、
集客を増やすのか。
客単価を上げるのか。
営業時間を広げるのか。
新しい商品を開発するのか。
新しい販売先を開拓するのか。
そして、それを実現するための人材・設備・資金はあるのか。
さまざまな要素が絡み合っています。
今回の実務従事でも、マーケティング・人材・生産・組織・財務などを横断しながら企業を分析しました。
一つの専門分野だけを見るのではなく、企業全体を俯瞰しながら課題を整理し、経営者と一緒に優先順位を考える。
これは、中小企業診断士だからこそ経験できる企業支援の醍醐味の一つです。
実際の企業だからこそ得られる学び
実務従事では、教科書のケーススタディとは異なり、実際に経営している企業を対象に分析・提案を行います。
当然、最初から「正解」が用意されているわけではありません。
限られた情報から仮説を立て、ヒアリングで確認し、チームメンバーと議論しながら、企業にとって実行可能な提案へと落とし込んでいく必要があります。
また、同じ企業を見ても、参加者によって着目するポイントは異なります。
自分にはなかった視点を他の診断士から学べることも、チームで実務従事に取り組む大きなメリットです。
診断士ドットコムでは、今後も実際の企業を題材とした実務従事プログラムを通じて、中小企業診断士が実践的な企業支援を経験できる機会を提供してまいります。
次回開催について
診断士ドットコムでは、2026年10月・12月開催の実務従事について現在お申し込みを受け付けております。
少人数制で開催しているため、各日程とも定員に達し次第、受付を締め切らせていただきます。
実務ポイントの取得はもちろん、実際の企業を題材に経営支援を体験したい方は、ぜひ次回開催をご検討ください。


